秋の句

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新着作品（2023年秋）

生きること仕事と思ふ曼殊沙華
空を見て母子立ち止まる良夜かな
音もなく来客のある薄紅葉
食卓に栗こんもりと置いてあり
清いもの肺に満たしてそばの花
長き夜の幾たびも湯を沸かしけり
木犀の香や偽りと思ひつつ
秋雨や排水溝の中の音
客席のいろんな頭葡萄棚
秋桜の不揃ひなるを愛でにけり
対すると素直になれぬ青蜜柑
爪楊枝刺して一口大の梨
洋服のするりと脱げて衣被
次の世は木に生まれたき残暑かな
そろそろか焼くる秋刀魚の破裂音
父の切る西瓜均しくありにけり
痛飲の果て夜明けのマスカット
あの道がここに繋がりゐのこづち
風に乗る運動会のアナウンス
秋水や角をゆっくり曲がる猫
吊橋の下風とほる芒かな

2022年以前

行く秋の丹沢に富士隠れけり
山粧ふこと考へてをりにけり
啄木鳥の道の途中に母を待つ
次の世は木に生まれたき残暑かな
おにぎりの形まんまる草清水
水澄めり私の眠り深ければ
露草の二輪咲きたる駐車場
食べかけの西瓜はハンガリーの国旗
週末は雨の日多し稲の花
目薬の一滴の量長崎忌
沈みゆく日の明るさの熟柿かな
平日の公民館に小鳥来る
二着なる運動会の塩むすび
すきま風熟した柿を皿に盛る
木犀の香や偽りと思ひつつ
コスモスの下より空を眺めけり
紅葉のしてきつつある川遊び
明日のこと分からぬ山芋を食ふ
迷ひなく描かれし線花の草
影つれて雲動きけり大花野
平日の公民館に小鳥来る
吊橋の下風とほる芒かな
天国に色なき風が届く頃
デジタルな動きをしたる蜻蛉かな
秋晴れを背にして「行くぞ」変化球
ダヴィンチの人体図めく昼寝かな
円周に等分の点青蜜柑
鱗雲残し地球の回りけり