春の句

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2024年

菜の花をさつと茹でたる腕かな
全身で校門押す子迎春花
耕して土の匂ひのゆたかなる
お互ひを温め合ふて恋の猫
我ゆけば一羽はぐれて雀の子
蛇の頭葉を押し上げて穴を出づ
春の陽のたてがみ伸びてゆきにけり
往来の少なき道の桜かな
花辛夷優しき人の集まりぬ
春一番多摩川改札十時半
蒲公英の名札のなくて咲きにけり
あたたかや軍手と鍵の置いてある
山間の鉄塔動く桜かな
かつて吾も下校途中の若緑
懸命な囀りのある暴風雨
挨拶をしそこねてゐる梅の花
薄氷壊さぬやうにとて壊れ
摘草やぺらぺらと葉のメトロノーム
蝌蚪生れて斑模様に夜の雲
水をやるやうに菠薐草洗ふ

2023年以前

野仏を順に拝みてすみれ草
早春の山こそよけれ地蔵尊
小手鞠の花通り過ぎてしまふ
恋の猫人を気にする風もなく
春の陽のたてがみ伸びてゆきにけり
檻の鳥見し我も檻春の雨
我ゆけば一羽はぐれて雀の子
桜にも花咲く枝と咲かぬ枝
戻らざる時を咲かせて花ミモザ
蒲公英の名札なくて咲きにけり
カーテンに影を大きく蝶の昼
永日の卵ひとつの重みかな
囀りや昔も今も日の差して
春雨や遮断機黒黄少し赤
日に追はれ日を追ひかけて花菜風
梅の花通りすぎると笑ひ声