冬の句

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新着作品（2023-2024年 冬）

神経の溶け出してゆく冬至の湯
襟巻の静かに席を立つ紳士
人の居ぬオフィスを乾く鏡餅
人来たと鳥が言ひをり山眠る
咳きて仰向けのまま跳ね上がる
隼の降下して地にぶつかるか
何層も椅子の背にあるコートかな
日脚伸ぶ登り始めの険しくて
厳冬のブロッコリーの躍動感
カレンダーなき部屋にゐて冬の夜
真っ直ぐなひこうき雲や梅早し
聖菓切る今このときも戦火あり
すり減らす命ありけり冬桜
風邪の猫忙しくなく耳ひくつかせ
底冷や身体の痛きまで眠る
後ろ手にゆうくり歩む落葉かな
立冬や日時計となる塔の影
手の皺の三角四角冬に入る
霜月の指に親しき本の腹
木の葉髪お湯に浮くもの沈むもの

2022年以前

石垣に猫の尾垂れる冬田道
箱入りの蜜柑に届く日の光
勾配を蝋梅の香の降りてくる
白菜はだいたいざくと切りにけり
思はざる長き寄り道帰り花
牛乳の冷たく胸を通りけり
花八手今あるものとなきものと
セーターの穴そのままに出かけけり
熱き茶の温くなるまで日向ぼこ
とりあへず毛布一枚あればよし
靴ごしのコンクリートの冷たさよ
堆く蜜柑の積まれ祖母とゐる
聖菓切る今このときも戦火あり
襟巻の静かに席を立つ紳士
水涸れて地平線より雲の湧く