俳句の話題 「師走の句」

こんにちは。

冬至も過ぎ、師走ももうあとわずか、クリスマスや新年の準備に気忙しく動きながらも何かときめく年の暮れ。今回はそんな時期を詠まれた利用者さんの俳句を、1枚1枚違えたお母様の絵が添えられた栞の写真をご紹介しながらお話したいと思います。

「クリスマス ワイングラスに 星重ね」

「聖菓切る 今このときも 戦火あり」

「師走晴れ 声透きとほる ジョンレノン」

「夕刻の チャイム早まる 枇杷の花」

街はクリスマス装飾に彩られ、クリスマスソングがあちこちに流れていますが、利用者さんはジョンレノンのクリスマスソング「ハッピークリスマス(War is over)」の歌声を詠んでいます。この曲は平和を願うメッセージソングでもあり、副題の(War is over)は
2句目に呼応する気がしますね。

3句目の「声透きとほる」4句目の「チャイム」という音の要素を加えた句は、視覚だけでなく聴覚情報も加えられたことで、より臨場感が増し、鑑賞者は体感として感じられるように思います。

「俳句は写生」と定義した正岡子規の有名な句「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」や、子規が本歌取りした(敬意をもってモチーフにした)親交のあった夏目漱石の「鐘つけば銀杏散るなり建長寺」など、たったの17文字に季節、場所、情景、音、行動などあらゆる情報を盛り込み、鑑賞者をその場に居るような気持ちにさせてしまう、俳句の力は本当に素晴らしく魅力的ですね。

そんな俳句の得意な利用者さんは、ご自分の身近な生活体験を細やかな感性で捉え、いろいろな要素を取り入れながら俳句に詠まれています。これからも新作をご紹介していきます。お母様の絵の栞もご紹介します。またお楽しみ頂けたら嬉しく思います。

【気になる季語】

今回の気になる季語は
」…?
よく分からない始まりで申し訳ありません。
そうです、「山」だけでは季語になりません。季語になるのは「山桜」「山若葉」などの名詞か、「山笑う(春の季語)」「山粧ふ(秋)」「山眠る(冬)」などのように擬人化した表現の場合です。不思議なことに、擬人化表現の季語は海や川にはありません。風や月にも「風冴ゆ」や「月凍つる」など状態を表す表現はありますが、擬人化した表現の季語はありません。(昔のドラマには「お月さんが笑ってら〜」なんて台詞がありましたが。(笑))
なぜでしょう?「ふるさとの山」などよく言われますが、いつも見上げているにしろ、遠く離れて想うにしろ、どっしりと心に根をおろす大きな存在、心のよりどころのような存在に、父母や祖父母を想うような心情をかき立てられ、人に見立てているのでしょうか?これは私の勝手な解釈でしたが、そんな考えを浮かばせる季語には、いろいろな想いを寄せ、拡げる力があるように思います。
少し長くなりました。今回のコラムを終わります。